© Sam Harfouche / ECM Records

2003年にアルバム『チェンジング・プレイセズ』でECMからデビューして以来、ノルウx-でポップ・チャート1位に輝くなど20年以上ヨーロッパ・ジャズの第一線で活躍するピアニスト、トルド・グスタフセンが、ECMから10枚目となるトリオ・アルバム『シーイング』を9月にリリースすることが発表され、先行トラック「The Old Church」の配信がスタートした。

ノルウェーのピアニスト、トルド・グスタフセンは本作について「年を重ねるにつれ、人生と音楽の本質を追求するようになった私の個人的な成長を反映している」とコメントしており、このアルバムは、グスタフセンにとってECMレコードからの10枚目のリリースでもあり、注目に値する作品となっている。

グスタフセンのオリジナル5曲、ヨハン・セバスティアン・バッハの合唱曲2曲、ノルウェーの伝統的な教会賛美歌、そして19世紀のイギリスの合唱曲「Near My God, to Thee」を通して、トルドは長年の盟友であるヤーレ・ヴェスペスタ(ds)、ステイナー・ラクネス(double-b)と共に、ジャズ、ブルース、ゴスペル、スカンジナビアの民族音楽、教会音楽をブレンドした独自の音楽を深く掘り下げている。トルド本人が言うように「メロディを大切にする」このグループのインタープレイは、抑制から強さを引き出し、忍耐強く、しかしシンプルに音楽をクライマックスに向けて構築する。一方、ピアニストはトリオ・フォーマットの熟練マスターで、繊細なタッチと繊細なゴスペルの輝きでリードする。

このようにアルバム『シーイング』は、魅惑的なダウン・ホーム・フィーリングだけでなく、トルドが「形の効率性」と呼ぶものによっても強く特徴づけられている。「このアルバムでは、大がかりなソロはあまり見られない。その代わり、小さな即興パートの相互作用と形成に音楽性を注ぎ込み、基本的なディテールを 『最大化』することに努めた。そうすることで、このアルバムは、最近のライヴ・コンサートでは、より壮大な形式や長大な組曲、いくつかのテーマをひとつにまとめたり、長大なフリー・インプロヴィゼーションをしたりすることが多いのとは対照的な、クールな作品に仕上がっている。しかし、このアルバムに共通しているのは、計画や台本に従うのではなく、その瞬間に、より振動的で本質的だと感じられることを追求することなんだ。特に興味深いのは、ベースとピアノの間の対位法的な作業と、ダブルベースの温かく木製のふくよかな音である」ともコメントしている。

本作は、2023年秋に南フランスのステュディオ・ラ・ビュイソンヌでマンフレッド・アイヒャーのプロデュースの下、録音された、ECMレコード創立55周年イヤーを飾る強力作品の一つだ。

2024年秋から25年冬にかけて、トルド・グスタフセン・トリオは、オランダ、ベルギー、ドイツ、イギリス、オーストリア、スイス、ノルウェーなどで『シーイング』ヨーロッパ・ツアーを行う予定、ぜひ2025年に日本でもライヴを期待したい。


(トルド・グスタフセン・プロフィール)

1970年オスロに生まれ、ノルウェーの田舎町で育つ。4歳でピアノを始め、楽譜を読んでクラシック曲を演奏できるようになる前から作曲や即興演奏を行っていた。

19歳のとき、オスロ大学で勉強を始め、ジャズへの関心が芽生え始める。1993年にトロンハイムの音楽院のジャズ科に入学し、いくつかのバンドを結成してスカンジナビア全土をツアーで回るようになる。

2003年、グスタフセンがトリオで録音した『チェンジング・プレイス』でECMデビュー、ECMにとってここ10年で最も成功したアルバムとなった。2005年、2枚目のトリオ・アルバム『The Ground』がノルウェーのポップチャートで1位を獲得し、2007年には『Being There』で3部作を完成させた。2009年、グスタフセンはより柔軟なアンサンブルを新たに立ち上げ、アルバム『Restored, Returned』を発表。2012年にはインストゥルメンタル・カルテット・アルバム『The Well』を発表し、グスタフセンは、「これらのバンドやプロジェクトは、私自身の演奏の深化のための探求を表しています」と語っている。2018年に11年ぶりのトリオ作品『ジ・アザー・サイド』を発表、さらに2022年にもトリオ作品『オープニング』を発表。そしてECM在籍20年を超えた2024年、記念すべきECM10作目となる『シーイング』がリリース。


トルド・グスタフセン・トリオ
『シーイング』
Tord Gustavsen Trio / Seeing
SHMCD  税込:¥3,080
UCCE-1210
2024年9月20日(金)世界同時リリース

(収録曲)

01. 神様、私を静めてください / Jesus, gjør meg stille

02. 古い教会 / The Old Church

03. シーイング / Seeing

04. キリストは死の縄目につながれたり / Christ lag in Todesbanden

05. いとしき主に われは頼らん / Auf meinen lieben Gott. 

06. エクステンデッド・サークル / Extended Circle

07. ピアノ・インタールード:メディテーション / Piano Interlude – Meditation

08. ビニース・ユア・ウィズダム / Beneath Your Wisdom

09. 主よ 御許に近づかん / Nearer My God, To Thee

10. シアトル・ソング / Seattle Song

〈パーソネル〉
トルド・グスタフセン (p,) スタイナー・ラクネス (double-b) ヤーレ・ヴェスペスタ (ds)
★2023年10月、フランス、ペルヌ・レ・フォンテーヌ、ステュディオ・ラ・ビュイソンヌにて録音