2019年に創立50周年企画を迎えたECMレーベル。その所属のアーティストにECMについて語ってもらう「ECM artists talking about ECM」。今年最初の第9回目は、昨今話題のUKジャズ界の奥深さを感じるピアニスト/オルガン奏者でECMからの初トリオ作品『ヴァーミリオン』をリリースしたキット・ダウンズに話しを訊いた。

James Maddren, Kit Downes, Petter Eldh. Photo: Caterina Di Perri / ECM Records.

■My Favorite ECM Album
クレイグ・テイボーン / 『アヴェンジング・エンジェル』
Craig Taborn / Avenging Angel (2011年)

クレイグ・テイボーンの演奏は大好きで、アプローチもユニークで大好きで、録音もとても好きだ。より近くに感じてハイ・ファイなところが。彼はロンドンに音楽を教えに来たことがあって、それが私と同じ場所だったことがある。とても愛すべき人で純粋な音楽家だ。

■ECMと契約したきっかけ

サックス奏者のイアン・バラミーと長く友人関係にあるが、彼がトーマス・ストレーネンとFoodというトリオを組んでいて、まずトーマスと会いた。トーマスはその後イギリスのミュージシャンとノルウェーのミュージシャンとのコラボレーションをセットアップしようとしていて、そこに誘われたのがECM録音に参加したきっかけだ。それがTime is a Blind Guideというプロジェクトで、その1作目『Time is a Blind Guide』がECMでの初録音作品になる。 

そこでサン・チュンというプロデューサーに会い、ソロ・オルガンの作品『Obsidian』(2018)、そしてECM2作目『Dreamlife of Debris』(2019)は彼のプロデュースの下、リリースしました。その後トリオの作品も作ろうという話だったが、サンがECMを辞めてしまい、その後マンフレートが引き継いでくれた。

■あなたにとってマンフレート・アイヒャーとは?

彼は私のボスだ。(笑) そしてもちろん彼は素晴らしいプロデューサーだ。私がECMからリリースした最初の2枚はサン・チュンのプロデュースだったが、マンフレートの仕事はサンとは全く異なるものだった。サンはポスト・プロダクションに多くの時間、労力を費やしてくれ、編集なども行ったが、マンフレートは、2日レコーディング、1日ミキシングというようなオールド・スクールな方法で、全ては選択次第という感じだった。生の瞬間の音を捉える、見つけるということが重要で、それはとても素晴らしかったと思う。素晴らしいプロデューサーにとってはそこが重要なんだなと思った。

■ECMに期待することは?

素晴らしいサウンドを作りつづけてほしい。自分たちが演奏した音がよりよく聴こえるように!


キット・ダウンズ『ヴァーミリオン』
発売中


Header image: Kit Downes. Photo courtesy of ECM Records.