モダン・ジャズという言葉は、1920年代の「トラッド」や「クラシック」と区別するために1950年代のジャズを指す総称として使われたが、ポスト・バップも万能なカテゴリーとして使われていた。基本的には、ビ・バップの複雑なハーモニーやリズム、ハード・バップの活気溢れるゴスペルやラテンの要素を統合した音楽のことを指すが、1950年代後半から1960年代初頭にかけて、ジャズ界を牽引した主導者たちが持つ知識の蓄積や実験的な発想を反映した音楽を指す。
スケールやモードの使用、ヨーロッパのクラシック音楽からの影響、独特な調性や拍子が、この時代の代表的な録音作品に織り込まれた。アコースティック・ジャズに根ざしながらも、これらの新しい作品はチャーリー・パーカーのようなビ・バップのアイコンたちが作ったアルバムとは異なる性質を持っていた。「バード(パーカーの愛称)」の精神はポスト・バップにも息づいていたが、それは複数の新しい方向に羽ばたいていたのだ。
バップ史探訪:ポスト・バップに欠かせない4枚のアルバム
史上最高のジャズ・アルバムの一つとされるこの作品、キャノンボール・アダレイ&マイルス・デイヴィスの『サムシン・エルス』は、現代音楽全体を代表する名刺のようなアルバムだ。アルト・サックスのキャノンボール・アダレイとトランペットのマイルス・デイヴィスが、「枯葉」や「ラヴ・フォー・セール」といったスタンダード曲を長尺で解体し、優雅な叙情性の頂点を極める。一方、ピアノのハンク・ジョーンズ、ドラムのアート・ブレイキー、ウッド・ベースのサム・ジョーンズの比類なきリズム・セクションが柔軟かつ力強い演奏を披露している。知性と情熱が同時に沸き立つ音楽の緊張感は圧巻だ。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの重要なメンバーとして活躍し、作曲家としても優れた才能を発揮したサックス奏者ウェイン・ショーターは、ソロ・アーティストとしても比類のない作品を残した。彼がリリースした60年代のブルーノート作品は、ポスト・バップの代表と言えるアルバムがいくつかあり、現代のジャズ・プレイヤーたちに多大な影響を今なお与え続けている。
1964年の「スピーク・ノー・イーヴル」はその中でも最高傑作だ。タイトル曲のような鮮やかで想像力を掻き立てるテーマを書くショーターの能力は、他の追従を許さない。ドラムのエルヴィン・ジョーンズ、ウッド・ベースのロン・カーター、ピアノのハービー・ハンコック、トランペットのフレディ・ハバードという一流メンバーに支えられ、ショーターは真に創造性のピークを迎えている。
バド・パウエルやセロニアス・モンクと並び、ビル・エヴァンスは波乱万丈のキャリアの中でピアノ・トリオの音楽的ボキャブラリーを広めるのに重要な貢献をした。
マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』に印象派的な繊細さをもたらした事で有名なエヴァンスは、『トリオ ’64』でも素晴らしい演奏を披露している。彼自身とドラムのポール・モチアン、ウッド・ベースのゲイリー・ピーコックとの高度な相互作用は、即興音楽がいかに淀みなく流れる会話のように展開するかを示し、中心的なテーマと同じくらい多くの逸脱や余談があるものかを示している。
ハービー・ハンコックのキャリアの最初の10年間だけで数え切れないほどの名作があり、その後の5年間もハイライトが多すぎて、その中から1作品を選ぶのは至難の業だ。しかし、1964年の『エンピリアン・アイルズ』はブルーノート時代のランドマーク的作品である。
「カンタロープ・アイランド」の洒脱なラテン風のリズムから、「ジ・エッグ」の謎めいた抽象的な作品まで、スタイルの幅広さは、ハンコックの無限の野心と、エンターテイメント性と革新性を兼ね備えた才能を物語っています。バンドには、トランペットのフレディ・ハバード、ウッド・ベースのロン・カーター、若き天才ドラマーのトニー・ウィリアムズが参加している。
ケビン・ル・ジャンドルは、ブラック・ミュージックに深い知見を持つジャーナリスト、ブロードキャスター。Jazzwise、ガーディアン紙、BBCラジオ3に寄稿している。最新刊は『Hear My Train A Comin’:The Songs Of Jimi Hendrix』。
ヘッダー画像: ウェイン・ショーター。1962 年頃。Photo: Michael Ochs Archives via Getty.